ARTICLE EVENT関連イベント情報
【全国の事例】既存の経営資源をベースに挑む新たな事業展開
宮崎の秘境から世界のキャビア市場を獲りにいく建設業3代目
有限会社鈴木組 鈴木宏明 氏
「田舎でもイノベーションは起こせる」と、NTT東日本勤務から宮崎県にUターンして山奥でチョウザメ養殖をスタート。九州山地のほぼ中央部、熊本県と境を接する宮崎県椎葉村。ここで河川や道路などの土木工事の請負をはじめ、地域資源を活用した林業や農業も手がける鈴木組の新規事業として、2005年、チョウザメの陸上養殖を開始。日本三大秘境のひとつに数えられる山間の村で、チョウザメを稚魚から育て、その卵をキャビアに加工し、ブランド化を推し進めている。第1回「アトツギ甲子園」で最優秀グランプリを獲得。豪雨災害による工場の被災など、さまざまな障壁を乗り越えながら、キャビア生産で世界シェア4分の1を獲得することをめざす。
木工所から生まれた自社ブランドの折りたたみデスク、在宅ワークで需要拡大
細田製作所 細田真之介 氏
祖父が建具屋として創業し、父親は現役の一級建築士として活躍。東京都東久留米市で昭和42年から3代続く「細田木工所」の3代目として、オーダー家具やプロダクト開発、インテリアデザインなど幅広く取り組む。あくまでも家業を継ぐのは目的ではなく手段ととらえ、新ブランドとして「Sense Of Fun(SOF)」という異業種のクリエイターチームを立ち上げる。壁掛けの折りたたみデスク「タナプラス」は、壁掛けの折りたたみデスク「タナプラス」は、日本特有の狭い住空間になじみ、在宅ワークが定着したコロナ禍において需要が急増した。大手デベロッパーの新築物件にも採用されるなど事業を拡大している。第1回、第2回「アトツギ甲子園」ファイナリスト。
日本茶の魅力を伝える、各産地の茶業を繋ぐプラットフォームを開設
有限会社丸新柴本 植田大 氏
牧之原市の製茶業。植田大さんは、IT関連の仕事に就いていたが、茶業の道を志して4代目として家業承継を決意。全国の茶業者が出品する日本茶専門ECサイト「CHANOBA(チャノバ)」を開設。茶業者が産地などの垣根を越え、他社の販路拡大をサポートする取り組みは珍しい。家業に入ってから、各産地ともに担い手不足やリーフ茶需要低迷といった課題が共通していることに着目。「多様な日本茶の魅力を多くの人に再発見してもらいたい」との思いを強くし、前職時代の経験を生かして実現にこぎつけた。
産地や品目ごとの解説機能を強化して、日本茶になじみが薄い消費者でも使いやすいプラットフォームづくりを進める。「将来的には、海外への販路拡大をサポートし、サイトを通じて事業者間のマッチングを図り新たな商品開発を促進するなど、業界全体の活性化にもつなげていきたい」と意気込む。第1回「アトツギ甲子園」ファイナリスト。
家業の知見と、自身の経験を掛け算し、ARサービスをローンチ
株式会社志誠販売 戦正典 氏
父親が服飾雑貨やインテリア雑貨の卸としておよそ50年前に創業。2代目である正典さんは、eコマースにおいて、消費者がデジタル上で物理的な店舗体験を提供するサービス「AR Mall」をローンチ。BtoC販売を検討する企業への営業を開始した。
もともと家業を継ぐ気はなく、ニューヨークで自身の会社を設立。その後シリコンバレーに渡り、ファッションテクノロジーのスタートアップにエンジニアとして参画。時を同じくして、家業が危機的な状況にあると聞かされた正典さんは、社員一人一人と面談し、事業に対する想いを聞く中で、帰国し家業を継ぐことを決意。しばらくは、在庫管理やキャッシュフローなど業務改善に集中せざるを得なかったが、自身のスキルや体験を活かした新規事業を立ち上げるタイミングを見計らっていた。「いつかは米国で再挑戦したい。大阪の卸街からそんな会社が出てきたら面白いじゃないですか」。シリコンバレーから家業へと舞台を移し、かつて抱いた夢はふたたび未来に向けて動き出している。第1回「アトツギ甲子園」ファイナリスト。
婦人靴OEM工場の3代目、ユニセックススニーカー自社ブランドで世界を目指す
株式会社インターナショナルシューズ 上田誠一郎氏
大学卒業後5年間、高級婦人靴ブランドで小売業を経験し、家業である革製婦人靴のOEM工場に入社。入社してすぐに主要取引先の1社が民事再生法の適用になり、窮地に陥る。既存のOEM事業での新規開拓で全国を回りながらも、新たな自社の柱となる新規事業の種を模索し続けていた。2019年に創業以来初のメンズ市場に参入するべく、レザースニーカーの開発に挑戦を決意。2020年3月、長年繊細な婦人靴で培ってきた技術、ノウハウを活用し、自社初のユニセックスレザースニーカーブランド「brightway(ブライトウェイ)」が誕生した。Makuakeで多くの応援購入実績を達成したことから、百貨店やセレクトショップでの取り扱い、POPUPに繋がっている。また自社ブランドの認知が上がることで、国内外の多くのブランドからOEMの新規依頼も増えるなど相乗効果が生まれている。
社名である「インターナショナルシューズ」は、創業者である祖父が、世界中の人に自分たちが作った靴を履いてほしいと願い名付けた。今後は世界市場に向けて勝負をかける。第2回「アトツギ甲子園」ファイナリスト。
オホーツク発のバイオテック企業、牛の尿が地球を救う!?
環境大善株式会社 代表取締役社長 窪之内 誠 氏
北海道でも特に酪農業が盛んな道東にある北見市。酪農につきものの牛の尿を、微生物発酵技術で無害化してできた、人にも地球にもやさしい消臭液『きえ~る』を開発。もともと廃棄物だった牛の尿が、消臭や土壌改良などさまざまな効果を発揮する。2代目の窪之内社長は、前職で営業やマーケティング職に従事していたが、「父のマインドを引き継ぐことができる人間がやらないと、すぐ事業が縮小してしまう」と考え、承継を決意。社外のアートディレクターとの出会いでブランディングを強化するとともに、地元の大学との共同研究を開始。「牛の尿が地球を救う」という世界観をデザインの力とデータで発信することで、順調に売り上げを伸ばしている。既に海外進出も果たしている。主な輸出先はカンボジアを筆頭に、ベトナム、韓国、中国、ミャンマー、シンガポール。海外の旺盛な需要を見て将来的には国内外でプラント運用を実施するべく計画中だ。第3回「アトツギ甲子園」ファイナリストのメンタリングを担当。
老舗製薬会社ミミズを究めて起死回生!が研究開発型ベンチャーへの道
ワキ製薬株式会社 代表取締役 脇本真之介氏
奈良県・大和高田市の1882年創業の製薬会社。ミミズ配合総合感冒薬「みみとん」をはじめ、ミミズを用いたサプリ開発や機能性物質の研究を行ってきた。また日本のみならず世界9カ国で商品を展開する。しかし脇本氏が家業に入社した当時、さまざまな問題が同時多発していた。13億円の借金、主力製品の特許切れ、市場の分散、協力会社の離反などにより売上の8割を失った。危機的状況の中、2012年の社長交代を機に、ミミズを用いた原料の研究開発から商品の生産まで一気通貫できる企業へとかじを切る。日本有数の大学の研究者に師事しながら論文発表や特許取得に猛進した結果、業績は倒産寸前の状態から一気に回復。承継時の売上3億円の赤字経営から、売上12億を実現。利益率は10%以上に向上させた。昨年は同業の製薬メーカーが廃業すると聞き、創業家一族と共に事業再興をめざすM&Aを実施。M&A1年目に売上153%成長を達成。第2回、第3回「アトツギ甲子園」ファイナリストのメンタリングを担当。
建築資材卸で培ったナレッジをベースに専門特化の職人マッチングサイト
白神商事株式会社 代表取締役 白神康一郎 氏
岡山の屋根材販売店、白神商事の3代目社長の康一郎氏は、東京大学大学院でコンクリートの靱性を研究、証券会社で5年勤務した後に、家業を継ぐことを決断。資材の配達・卸売業で培った製品知識や建築現場のニーズをベースに立ち上げたのが、ユーザーと屋根専門の工事会社のマッチングサイト「やねいろは」だ。登録社数は410社に到達した(2023年1月現在)。
この新規事業を通して、取引先の工事会社の広報やPRをサポートできるようになった。さらに、新規でサイトを利用した工事会社が、結果的に卸業でも取引に繋がるケースもあり、既存事業と新規事業の相乗効果が生まれている。
「やねいろは」に続き、外壁事業に特化した「かべいろは」も2020年にローンチ。2021年には新会社、いえいろは株式会社を設立。ITを活用した建築関連サービスを精力的に展開する。第2回、第3回「アトツギ甲子園」ファイナリストのメンタリングを担当。
測量設計事業から、島根発ディープテック企業へと事業を転換
株式会社ミライエ 代表取締役 島田義久 氏
父親が興した測量設計会社で、経営危機から再建するも、2代目社長の島田義久氏は、新たに環境事業部を立ち上げ、当時の主要事業であった測量設計事業を撤退し、堆肥化装置、脱臭装置など、環境機器メーカー企業へと事業を転換。のこった社員と2名で再スタートを切る。web集客を中心に、インサイドセールスに力を入れており、島根の会社でありながら全国の官公庁、産廃業が取引先となっている。
ユニークな技術開発を強みとしており、取得した特許も多数。『世界初 消耗品ゼロの脱臭装置』ではMITベンチャーフォーラムや日経スタアトピッチなど著名な表彰制度で高い評価を得ている。現在は、北海道大学などと連携して、業界初となる脱臭装置のIoT化の開発を進めている。2021年には中国電力などから出資を受け、組織力を強化。IPOに向けて事業を拡大している。第2回、第3回「アトツギ甲子園」ファイナリストのメンタリングを担当。
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