アトツギSUMMER CAMP イベントレポート
2024年9月9日(月)〜9月10日(火)の2日間に渡りステーションコンファレンス東京で開催された、後継者・支援者向けオンラインコミュニティACTのキックオフイベント『アトツギSUMMER CAMP』。元サッカー日本代表監督の岡田武史氏など著名な経営者によるトークセッションをはじめ、後継者向けのグループワーク、支援者向けの相談会などさまざまな角度からアトツギ支援にアプローチする充実したイベントとなりました。
初開催ながら参加者は2日間で中小企業の後継者83名、支援機関66名の合計149名。アトツギへの熱い思いを持った参加者が集い、大盛り上がりとなったイベントの様子をお届けします!
SESSION 1:
イノベーションは地方から起きる
~アトツギがおこす地方革新の可能性~
<登壇者>
最初のセッション登壇者は元サッカー日本代表監督で現在夢スポーツ代表取締役会長である岡田武史氏。今治市の地方創生事業に取り組む岡田氏の登場に、アトツギの皆さんの気持ちも高まります!
自らも経営者である岡田氏は「監督は選手の成績をもとにチームを編成できるが、アトツギの皆さんは良くも悪くも既存社員ごと引き継がなければならない」と監督と経営者の違いを説明。その上で、「“あなたは社長の子どもだから自分たちとは違う”と従業員に思われないよう、いかに既存社員とコミュニケーションをとるか。社内全体の情報流通をスムーズにして従業員に自社の事業を自分ごととして捉えてもらうことが大切」と既存従業員とのコミュニケーションの重要性を語りました。
質疑応答では「新規事業を展開する際の従業員の巻き込み方」に関する質問も。岡田氏からは、「人は数値ではなく“夢”についてくる。だからこそ、新規事業を実現することで叶えられる夢を経営者は語らなければならない」とアドバイスがありました。
セッションの終わりには「今後経営で難しい局面を迎えたとしても自分に正直に生きてください。知らないことは知らない、分からないことは分からない。そう言える素直さと、あなたらしさを持ち続けてください」と岡田氏からアトツギたちにエールが送られました!
SESSION 2:
アトツギたちの挑戦とその軌跡
<登壇者>
岡田氏登壇のセッション1で一気に盛り上がった会場。次に行われたのは、後継者が既存の経営資源を活かした事業アイデアを後継者たちが競うピッチイベント「アトツギ甲子園」入賞者によるトークセッションです。「アトツギ甲子園」に挑戦する過程で感じた想いや出場後に得られたことについて語りました。
登壇者の皆さんからは、ピッチ練習や各ブロックを担当するメンターからのフィードバックを通じて、「事業内容が磨かれていった」などの感想が。メンターや周囲の協力を得ながら新規事業を考える経験や同じ境遇の人と語り合ったことで視座が高くなり、自身の成長につながったそうです。
「アトツギ甲子園」参加後の既存事業への影響については、メディア露出だけでなく従業員から反響があったとの声も。有限会社森清掃社の山添氏からは「義父からの事業継承のため、古くからの従業員から信頼を得るのが難しい側面があった。「アトツギ甲子園」に挑戦し優秀賞を獲ったことで、事業を盛り上げたい想いを形として伝えられた」と「アトツギ甲子園」が「従業員との信頼関係構築」に寄与したことを語りました。
セッションの最後には「『アトツギ甲子園』へエントリーしてしまえばあとはやるだけ。挑戦すれば確実に成長につながる場」と出場を後押しするコメントも!支援者に対しては「後継者は相談先がなく孤独なことが多い。ぜひ支援してほしい」と後継者支援の必要性を呼びかけました。
SESSION 3:
アトツギ支援先進地域のエコシステムを徹底解剖
セッション3〜4ではアトツギと支援者に分かれ、アトツギはワークシートを通じて家業の未来を考えるプログラムを実施。その間に支援者向けのトークセッションが開催されました。以下では、支援者向けのトークセッションの模様をお伝えします。
<登壇者>
セッションでは、支援者同士が協力することで「後継者支援エコシステム構築」に成功した京都府北部地域の事例を紹介。後継者支援エコシステムの主催者・京都信用保証協会の村井氏は「後継者支援は機械的に他の地域の事例を模倣するのではなく、地域の特性に合わせて対応しなければならない。だからこそ地域を理解した支援者の協力が必要」など、地域に根付いた支援の重要性を語りました。
また、村井氏は「出身地を盛り上げたい想いから新規事業を立ち上げた濱田さん、後継者の視点から運営をサポートする大滝さん、後継者にプログラムへの参加を呼びかける羽賀さん。全員が熱量高く協力しているから盛り上げられている」と各機関の協業体制についても言及し、参加者は興味津々。質疑が止まらないセッションとなりました!
SESSION 4:
支援機関の属性別セッション
セッション4でも引き続き支援者向けのセッションが開催されました。ここではアトツギ支援を行なう5人の登壇者がブースごとに分かれ、自治体や金融機関など、支援機関ごとの悩みを質疑応答形式で解消します。
<登壇者>
みなと銀行の河田氏のブースでは「現役の社長に事業継承の話をするのは難しいのでは?」「短期的な利益を期待できない後継者支援について、社内でどう理解を得たのでしょうか?」など金融機関ならではの悩みが寄せられました。
それぞれの質問に対して、「担当者レベルではなく、現役社長と長く信頼関係を築いている支店長などから話してもらう」「最初は社長から後継者支援事業をトップダウン形式で従業員に説明し、会社の方針として認知してもらう。その後は役員と現場担当者両方とコミュニケーションをとること、短期的な利益は得られない前提で運営をすることが大切」など支援する側のリアルが見えた質疑となりました。
その後ワークを終えたアトツギと支援者が合流し、グループワークで議論した事業内容や自社の取り組みを発表。支援者からの「新規事業の立ち上げと既存事業の発展、どちらを優先したい?」との質問に「既存事業の運営で手一杯だが、今後は新規事業に力を入れたい」とアトツギが語るなど、支援者と後継者が真剣に事業継承の未来を考える熱い場となりました。
懇親会
Day1の締めくくりに開催された懇親会は、セッション2にも登壇した第4回「アトツギ甲子園」受賞者・山添氏の「すべての出会いに意味があると思います。意味を作る懇親会にしていきましょう!」という勢いのある乾杯で開始!
懇親会では「現経営者からどのように引き継ぐことが最適なのか迷っている」など、アトツギ同士だからこその本音が漏れる場面も。1日を通じて自身の課題や事業の課題と向き合ったアトツギ、事業承継支援を学んだ支援者が、同じ立場・違う立場で語り合う場となりました。
セッション 5:
「地方創生 × アトツギ」が持つポテンシャルについて
2日目に開催されたセッション5は、「アトツギ甲子園」の各地域プロデューサーであり、今もアトツギとして新規事業展開や地方創生に取り組む3社のトークセッション。アトツギになったきっかけや事業継承した後に実施した具体的な取り組みや既存事業と掛け合わせた新規事業の展開方法などアトツギが「今」気になることをお話しいただきました。
<登壇者>
登壇者の皆さんが事業継承後に実施したことには、ミッション・ビジョン・バリューの設定やマネジメント研修など、実態を踏まえた従業員へのアプローチの具体例がたくさんあり、参加者も興味津々でした!
新規事業展開については、株式会社友安製作所の友安氏が「自社のアイデンティティを失わず、既存事業とのつながりを作ること。ないものを作ろうとするのではなく、あるものを組み合わせた事業展開に目を向けるべき」と言及。他の登壇者も既存事業やリソースを活かすことの大切さを強調しました。
その後開催された壁打ち・相談会では、アトツギと支援者が混在したグループで、アトツギが考えている新規事業について壁打ち。「業界自体が縮小傾向の中、いかに顧客と直接接点を持ち事業展開していくか」「立ち上げたプラットフォームをどのように広めて利益を上げていくか」など各自の新規事業における課題を打ち明け、他のアトツギや支援者からの質問に答えることで課題と向き合う時間となりました。
SESSION 6:
著名なアトツギ経営者との参加型トークセッション
最終セッションはPIVOT株式会社との連動企画。株式会社ジャパネットホールディングスの髙田氏と株式会社SHONAIの山中氏による、後継者問題についてのトークセッションでした!
<登壇者>
「現代の後継者問題についてどのように思いますか?」との質問に、山中氏からは「既存事業を“継ぐしかない”と受動的な態度の後継者が多すぎる。親から事業を勝ち取る気持ちがない」と辛口なコメントが……!
髙田氏も「創業者はアトツギの意見に反対もするが、その裏側には“自分に打ち勝って、勝ち得てほしい”想いがある。継ぎたいと思わないのであれば、継がない選択をするべき」と能動的にポジションを得る必要性を語りました。
質疑応答では、「事業を進めるだけでなく、地域を大切にしているのはなぜか」との質問が。髙田氏は「僕にできる社会課題の解決で、一番誰も傷つかないのが地方創生だと思って。ただ、地域創生してるから儲からなくていい、という言い訳は絶対NG。例えば5%でもいいから利益を出すと、日本中で民間企業主導の地域創生が走り出すと思う。だから僕らの目標は、長崎で大成功させてみんなに真似してもらうこと」と、地方創生事業に取り組む姿勢を語ってくれました。
最後に髙田氏から、「後継者は厳しい目にさらされることもある。後継者同士の横のつながりを大切にしつつ“失敗しても、やりなおせばいい”と強い気持ちでチャレンジをしてほしい」とエールが送られました。
参加者の感想
事業後継者
有限会社電研 営業部
桐島 豊 さん
2日間の開催は長いと思っていましたが、時間が足りなかったくらいです!既存事業に追われるなか、今回のイベントで将来的に取り組むべきことの解像度を上げられました。新規事業も、“画期的な何か”をやらなければいけないと思い込んでいましたが、登壇者の方々の「既存事業と掛け合わせて新規事業を考える」というお話から、もっとシンプルで良いのだと思えました。
自治体支援者
熊本市 経済観光局
産業部 経済政策課 中小企業振興班 主任主事
本村 祐樹 さん
アトツギの皆さんのパワーを感じました!登壇されている方が共通して既存事業を生かしている点、新規事業を展開する上でも自社のミッションやポリシーを大事にされている点が大変勉強になりました。今年から熊本市でも後継支援を行なっているため、実際に成功事例を聞き、アトツギの方と交流ができて支援する意味をより感じました。
登壇者
京都信用保証協会
企業支援部 経営支援課 課長補佐
村井 章大 さん
熱量の高いアトツギの方が、全国から大勢集まったことに驚きました。アトツギ支援が始まった5〜6年前とは比べ物にならないくらい支援者も増えています。私は京都で自治体や地域金融機関、支援機関、ローカルベンチャー、地元アトツギ経営者等と連携しながら後継者支援を行なっています。後継者問題は、各都道府県のステークホルダーが熱量を持ち、組織の垣根を超えて自分ごととして取り組む必要があると思っています。今回参加して、アトツギ支援がますます盛り上がっていく様子を肌で感じました!
大盛況のうちに幕を閉じた『アトツギSUMMER CAMP』。アトツギ同士、支援者同士、アトツギと支援者がつながり共に学ぶ2日間となりました。課題の多い後継者問題だが、事業後継者と支援機関が協力すれば未来は変えられる───。多くの参加者がそう感じたイベントになったのではないでしょうか?
中小企業の後継者、後継予定者と「アトツギ支援」に関心をもつ自治体、金融機関、支援機関等がつながるオンラインコミュニティACTは、2024年8月1日(木)〜2025年3月1日(土)まで参加者を募集中です。後継者向け、支援機関向けのイベントを開催予定。「アトツギ甲子園」へのエントリーと同時に、こちらもぜひご参加ください!
▼オンラインコミュニティACT詳細
https://atotsugi-koshien.go.jp/act/
▼「アトツギ甲子園」詳細
https://atotsugi-koshien.go.jp/about/
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